『アントマン&ワスプ:クアントマニア』、雑感…(ネタバレあり)。

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アントマン』シリーズの3作目。監督は前作・前々作に続きペイトン・リード。

脚本がアニメ『リック・アンド・モーティ』にも関わっていた人という事で楽しみにしていた本作。『リック・アンド・モーティ』自体が科学者のリックとその孫モーティを中心に、並行世界やタイムトラベルなど、SFというジャンルで滅茶苦茶の限りを尽くすコメディで、かつその中心には1つの家族の物語・活躍があるという作品だったので、本作『クアントマニア』の設定的にもピッタリ。

カーンの一連の描写なんかは完全に『リック・アンド・モーティ』で描かれた並行世界関係のエピソードそのままな感じで、これからのMCU世界でのカーンの活躍や結末が楽しみになる一方、ジョナサン・メジャースが演じたカーンが魅力的だったかというと微妙で、ドラマ『ロキ』でメジャースが演じたカーンの変異体である“在り続ける者”の方がキャラクターとしては魅力的だった。

作中で様々な世界のアベンジャーズのメンバーを倒してきた…的な描写もあるけどいまいち説得力に欠けるし(本作のカーンが万全の状態では無かったのかもしれないけど)戦い方もアイアンマンとワンダを足したような感じだし、最終的には物理で殴るだけというのも、スコットの見せ場的には仕様が無いのかもだけど…な感じ。カーンを演じたジョナサン・メジャース的にはこの後『クリード3』というボクシング映画が控えているので、そっちの方が格好良いだろうなという感情も鑑賞中によぎって盛り上がりに欠けてしまう…。

その後アントマンがカーンとの決着後に量子世界にホープと共に閉じ込められてしまう…とかだったら、前作のラストの事もあって今後の作品が楽しみになるけど、特に問題なく元の世界に戻ってくるので、『アントマン』らしい軽さはあるけれど…なのも難しい所。

『リック・アンド・モーティ』では別の世界が壊れても全然気にしないというノリでお話が進んだ先に、とんでもない混乱が訪れるという感じだったので、無邪気に世界を壊していたら取り返しのつかない状態になってしまった…という恐怖がMCUの世界にも訪れる事を期待したい…。

お話の進め方や一部のキャラには疑問も多い本作だけど、スコット・ラングというキャラクターのヒーローとしての在り方や、娘キャシー周りの描き方はとても好きで、スコットがかつて社会という大きなシステムの中で困窮している人達をロビン・フッド的に助けようとして服役していた過去とつながるように、サノスの指パッチンで家を無くした人達のデモに参加して警察に捕まったりと、理想の父親になりたいというスコットの思いを超えて、キャシーにとってはスコットが理想のヒーローとして記憶されているというのが熱く、ただ一心に娘を助けようとするスコットが最終的にはカーンの圧政に苦しむ人達を救うという展開も、冒頭で自分が次に出来る事は何なのか悩んでいたスコットが娘の後を追う事によって、娘の理想である、そしてかつて既にそうだったヒーローの姿に立ち返るという流れは、『アントマン』3作目としても凄く好き。

キャシーがモードックことダレン・クロスに「クソ野郎はいつでも止められる」的な事を言ってダレンが改心する展開も、『アントマン』シリーズの良い意味での軽さがあるからこそ出来る流れなのかなという気がするし、何か重大な出来事があって初めて人は変わる事が出来る…みたいな物語の中における悪役がキャラ変する時に必ず経なければいけないお約束をサラッと流してくれる所も気持ちが良い。

スライムのような穴の無い生命体のヴェブの伏線回収や、今までのシリーズではあまり出番が無かったジャネットの活躍、『ロ・ド・オブ・ザ・リング』のガンダルフの様なハンクのお助けシーンなど、魅力的に描かれるキャラクターが結構多いのも嬉しい。

ビジュアル的には観る前の段階では『スター・ウォーズ』っぽいと噂されていたのでそちらを意識しながら観ていたけど、どちらかと言うとフランスの漫画『アンカル』の作者であるメビウスの世界という感じで、戦士ジェントーラも正しくそのイメージ。生きている建物や『ロキ』の長回しシーンを思い出させるカメラワークとか、ビジュアル面では概ね満足。主人公サイドのキャラクターにも魅力を感じられたので、『アントマン』シリーズの中では本作が一番好みかも。

何かとMCUシリーズの流れを決める重要な役割を与えられがちなイメージなので、ドラマでも良いので日常ドタバタコメディを気軽に楽しめる『アントマン』単品も何時かは見てみたい。